「強すぎる」と言われてきたフリースタイルダンジョンの2代目モンスターですが、そのなかでも屈指の強さを持つFORKに焦点を当てていきます。

FORKのバトルスタイルは高度なライミングをすること。昔はとにかく韻を踏みまくっていましたが、最近では文脈を崩さず必要な韻だけを厳選して踏むというハイレベルなライミングをしています。また、「文字起こして後から気づく韻」というのはまさにFORKのことで、あまりにも自然で違和感のないライミングをするので観客も視聴者も韻を踏んだことに気づきません。

しかしそんなFORKの韻に対し「仕込んだネタ」「即興じゃない」という意見が一部あるようで…。

今回はFORKの神がかったライミングのからくりについてお答えしていきます!

魅RIン、じょう、ふぁんくらが「ネタ」を指摘

視聴者からTwitterでネタ指摘されることも多いですが、実際に戦っている相手ラッパーもFORKのライムがネタだと感じてる人はいるようです。

フリースタイルダンジョンで初めてFORKに「ネタ」を指摘したのは魅RIンです。なんと、FORKが2代目に就任して初めての試合でいきなり指摘が入りました。(2回くらい指摘してます)

さらに、じょうやふぁんくからも指摘が入りました。

「仕込んだネタ」というのは「即興で思いついた韻ではない」という意味です。つまり「考えてきた韻を吐くだけなら誰にでもできるよな?」ということが言いたいわけです。
しかし、その韻が即興か即興じゃないかなんてどうやって分かるのでしょうか?

「即興」と「ネタ」と「ストック」の違い

即興の韻

即興の韻であるかどうかは、その韻が「相手が言った言葉(単語)を拾って踏んでいるか」が一番わかりやすいですね。

「トップオブザヘッド(完全即興)」のスタイルで有名なSIMON JAPのバトルを見ると分かりやすいので、こちらの動画で解説していきます。

上の動画の40秒くらいのところを見て下さい。

輪入道が「メンチ怖いのは知ってるけど無理すんなよおっちゃん」と言った直後、SIMON JAPが「無理してねえ、いろんなもん脱ぎ捨ててやってるぜ。お前みたいにフリしてねえ。」と速攻で韻で返しました。

輪入道が最後に行った「無理すんなよ」という言葉を拾って「無理してねえ」→「脱ぎ捨てて」→「フリしてねえ」と踏んでいるので、これはもう即興以外の何物でもありません。

このように、相手が言った言葉(状況、服装など相手に関する何か)を拾って踏んだ韻は即興だと言えます。

「仕込んだネタ」の韻

相手が言った言葉や文脈に全く無関係な韻を踏んだ場合に「仕込んだネタ」だと分かります。私の印象だと若手のラッパーがよくやりますね。韻自体は上手なのですが、相手が言ったことと全く関係ない為「あ、頑張って用意して来たんだな」と察します。

いい例がこちらです。
ミメイvsT-TANGGの試合動画です。

先攻のミメイ(左側)が言ったことに対して、後攻のT-TANGGは「ナルトを殺すぜオロチマル 決して譲れないよこの美学 分かる?TANGGが名を刻む…」と韻を踏んで返していきますが、ミメイは先攻でナルトの話なんか一切してません。

もしミメイが「ナルト」というワードを使っていたり、ナルトに関する言葉を言っていれば、それに対してのアンサーとなるので即興と言えます。

オロチマル→この美学→名を刻む と韻自体は非常に上手なのですが、相手の言葉を拾った韻じゃない為「用意してきた感」が出すぎてしまっています。

さらに見ていくと、後攻のT-TANGGが「今日は首刈る関西勢 これで優勝今年8回目」と踏むのですが、相手が関西出身のミメイで、T-TANGGはこの大会優勝すると本当に今年8大会制覇することになるので、この韻を踏みたかったのだと思います。つまり試合前に用意しておいたネタということです。

このように、相手の言葉や文脈に全く関係のない韻を吐くと「ネタ」「即興じゃない」という印象を与えます。

「ストック」の韻

ラップバトルの世界ではネタ・即興以外に「ストック」という言葉もあります。

ストック=ネタと捉える人もいると思いますが、私はストックは半分即興で半分ネタだと思っています。

まず、上の試合のミメイvsT-TANGG後攻のT-TANGGが踏んだ「今日は首刈る関西勢 これで優勝今年8回目」という韻は、この「関西出身のミメイvsT-TANGG」ででしか適応されない韻です。つまり相手が変わったり大会が変わればこの韻は使えないので、この試合のためだけに用意した韻ということになります。これがネタです。

その試合だけのために用意したピンポイントな韻=ネタ と認識してください。

対して「ストック」とは、あらかじめ脳内に溜めてある韻のストックの中からその場に応じて最適なものを選んで踏んでいる韻のことを言います。

ラッパーなので、日ごろ脳内でラップして韻を踏んでいたりサイファーなどで日々韻のパターンは蓄積されていきます。それら蓄積されたものを瞬時に引っ張り出して韻を踏んでいるので半分ネタで半分即興であるというわけです。

「トップオブザヘッド(完全即興)」というのはラッパーでもかなりレベルの高い技術なので、多くの場合がこの「ストック」のライムだと思ってください。

即興とネタの区別は割と簡単につくものの、即興とストック、あるいはネタとストックの違いというのは慣れないと分からないかもしれませんね。

FORKは即興とストックを使い分けている

ここからFORKの韻はネタか?という核心に迫るわけですが、現在(2019年)のFORKは割合で言えば5割即興3~4割ストック1~2割ネタという感じだと分析しています。

どのラッパーでもそうなんですが、「100%ネタ」とか「100%即興」というのはあり得ません。どれか一つだけにくくられるわけではなくある程度割合があります。

ですが、FORKさんは特に即興とストックを明確に使い分けており、どちらかというと即興で踏むことを意識している気がします。

まず1バース(8小節)のうち、最初の2小節で相手が最後に言った言葉を拾って韻を踏んでいます。

例えばこの試合(FORK vs DragonOne)で、先攻のDragonOneが最後に「お前はならねえ今日の評価対象」と言ったのに対し、1小節目で「評価対象?知らねえ 俺達はもちろんライムにしか能がないの」と返しています。

ここの部分は完全に即興ですね。

あと、FORKの名試合の一つであるSURRY戦ですが、先攻のSURRYが6小節目で「所詮FORKのラップなどこの辺じゃ身こすりで終わっちまう」と言ったのに対し、後攻のFORKが「身こすり?じゃねえよ 俺がラップすればここは火の海だ 火曜の夜は俺のラップ聴いてシコる日だ」という風に『身こすり』といワードを拾って韻で畳みかけました。

しかし、2バース目(動画の1分08秒~)はほとんど全てストックライムだったと思います。「韻を踏むためにラップするんじゃねえ。言いてえことをラップして踏むんだよ」「何個踏めるか、俺も昔はやってた。だけど今だから言える、それは間違っていた」「例えばマイクとライブで韻踏んだって、やっぱあいつはカッケーなあと思わせるタイプのライムだ」
これらは鳥肌が立つほどに上手すぎる韻ですが、相手がSURRYじゃなくても言えることだよね?多く韻踏むタイプのヤツだったら誰にでも言えるんじゃないの?と思ってしまいます。
SURRYの2バース目の何かのワードやトピックスを拾ったわけではなくいきなり説教を始めたので、これは即興ではない可能性が高いです。

FORKの3バース目(動画の1分53秒~)も、言っていることはめちゃくちゃ上手いし、その上「使い方→旨いかだ」など韻を踏んでるので異次元なのですが、いつでも言えるようなことなので、完全即興とは言えづらいです。

例え「ネタ」にしろ、FORKの押韻センスはヤバい

FORKさんのラップは半分くらいは即興で韻踏んでいますが、半分かそれ以上はストックかネタであることは間違いないと思います。日ごろ脳内でフリースタイルしまくっていたり、「次のダンジョンで何か上手いこと言えないか」と考えているとは思います。

しかし、仮にその韻が即興であってもネタであっても、他のラッパーでは絶対に言えないような鳥肌が立つほど上手い韻を踏むので、もはやネタかどうかなんて関係ないと私は思っています。

FORK自身もvsふぁんく戦でネタを指摘された時に「例えば持ってきた極上のネタと、即興で生簀から取り出して捌いたクソマズいネタとどっちが客が喜ぶんだ?」と言っています。ネタやストックが多いことを認めましたが、即興で質の悪い韻を踏むくらいなら、お客さんや視聴者がブチ上がる韻を仕込んだ方が良いと、真っ当なことを言っています。

というか、FORKは即興でも鳥肌が立つような韻を踏むので、即興ライミングのセンスもあります。ただ、時々「上手いこと言おう」としすぎて何も思い浮かばず、グダグダっとなって目も当てられないような感じになってしまうことはありますが…

それでも「俺は中身がオリジナル 俺が勝ってまた深夜2時になるぜ(vsD96戦)」なんて韻を踏めるのはやっぱりFORKだけです。

もうじき2代目モンスターが卒業する空気感があり、そうなった場合FORKの試合が見れなくなるのは非常に残念ですね。

 

いかがだったでしょうか?

FORKの踏んでいる韻がネタかどうかなんて、あなたが昨日の夜に寝たかどうかくらい興味がありません。それでは!