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2024年6月中旬、急性カフェイン中毒にバナナが効くとの情報がX(Twitter)で議論を巻き起こし、真偽やカフェインとの付き合い方について医師に取材した。名古屋大学医学部附属病院・救急科長の山本尚範医師は、「科学的に効果がある充分な証拠はない」としつつ、カフェイン中毒で低カリウム血症が生じる場合バナナのカリウムが補充できる可能性はあると説明。しかし、バナナで全ての症状が改善するわけではないため、症状が出た場合は病院での診察を推奨している。カフェイン中毒は過剰摂取で致命的なリスクもあるため注意が必要だ。
急性カフェイン中毒にバナナが効く?その真相に迫る
2024年6月中旬、SNSプラットフォームX(旧Twitter)で「急性カフェイン中毒にバナナが効果的」という情報が話題となり、大論争を巻き起こしました。この情報の真偽や、カフェインとの付き合い方について名古屋大学医学部附属病院・救急科長の山本尚範医師に取材しました。
カフェイン中毒とは?
まず最初に、急性カフェイン中毒について簡単にご説明します。カフェインはコーヒーやエナジードリンク、チョコレートなどに含まれている一般的な刺激物質です。合理的な摂取量ならば安全ですが、過剰な摂取によって中毒を引き起こすことがあります。症状にはめまい、嘔気・嘔吐、下痢、不安、震え、興奮、頻脈、発熱などが含まれます。極端な場合には致死的になることもあるので注意が必要です。
SNSでの議論:バナナは本当に効果があるのか?
Xでの議論の火種となったのは、あるユーザーの体験談でした。そのユーザーは急性カフェイン中毒の症状を感じた際にバナナを食べたところ、症状が和らいだと伝えました。この情報に納得するユーザーもいれば、効果を否定するユーザーも現れ、情報が錯綜しました。
名古屋大学医学部附属病院・救急科長の山本尚範医師にこの件について取材したところ、次のような見解が得られました。
科学的な証拠(エビデンス)はない
山本医師は、「科学的に効果があるという充分な証拠(エビデンス)はない」と明言しました。ただし、バナナに含まれるカリウムが低カリウム血症を改善する可能性はあるとし、次のような理由を述べました。
「あえて言えば、カフェイン中毒により、血中のカリウム値が下がる(低カリウム血症)ことが多く、バナナにはカリウムが含まれていることから、これを補充することはできるかもしれない」
しかし、山本医師はこれがカフェイン中毒の完全な対処法とは言い難いと指摘しました。低カリウム血症による脱力感がバナナで改善される可能性はあるものの、これはカフェイン中毒の症状の一部に過ぎないため、根本的な治療にはならないということです。
自己判断は危険。医師の診察を受けましょう
カフェイン中毒の症状が疑われる場合には「自力で対処しようとはせず、速やかに病院を受診してほしい」と山本医師は注意を促しました。特に5000ミリグラム(5グラム)を超える過量摂取をした場合には、不整脈や心筋梗塞が起こり、命に関わることもあります。
安全なカフェインの摂取量とは?
では、カフェインの安全な摂取量とはどの程度でしょうか。一般的には1日に400ミリグラム以下の摂取が推奨されています。これは大体コーヒー4杯分に相当します。しかし、敏感な人や妊娠中の女性などはもっと少ない量で症状が現れることもあるので、自分の体調に合わせた摂取が重要です。
まとめ
急性カフェイン中毒に対するバナナの効果は科学的には十分な証拠がありませんが、低カリウム血症の一部の症状を緩和する可能性はあります。しかし、それをもってカフェイン中毒の完全な治療法とするべきではありません。カフェイン中毒の症状が現れた場合、自己判断せずに速やかに医師の診察を受けることが重要です。
カフェインの摂取は控えめにし、くれぐれも健康管理に気をつけましょう。