村上春樹とスガシカオが共演したラジオ番組の思い出
作家・村上春樹氏がディスクジョッキーを務めるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月25日(日)の放送では、「村上RADIO~ソウル・インストルメンタル・グループ~」がオンエアされました。
今回の「村上RADIO」では、1960年代のソウル・インストルメンタル・グループに焦点を当てました。番組の中で村上春樹さんは、ブッカー・T&ザ・MG’sのリーダー、ブッカーT・ジョーンズの自伝『Time Is Tight』を手にしながら、その時代と場所への思いを語りました。
この記事では、番組の中盤で特集された2曲について、村上さんのコメントを紹介します。
King Curtis「Jump Back」
最初に紹介されたのはキング・カーティスの「Jump Back」です。キング・カーティスは1934年、テキサス州フォートワースで生まれました。彼は幼い頃からサックスの音色に魅了され、10代のうちからスタジオ・ミュージシャンとして活動を始めました。
初めはウィントン・ケリーやナット・アダレイと組んでジャズを演奏し、プレスティッジ・レコードから数枚のレコードをリリースしましたが、あまり成功せず、R&B路線に転向しました。この転向が功を奏し、彼は成功を収めました。カーティスのサックス演奏は「ブロウ・テナー」と呼ばれ、派手に吹きまくるだけでなく、堅実なテクニックも兼ね備えています。
そして1964年にルーファス・トマスがヒットさせた「Jump Back」を紹介しました。
King Curtis「Memphis Soul Stew」
続いて紹介されたのはキング・カーティスの「Memphis Soul Stew」です。キング・カーティスはアトランティック・レコードの専属ミュージシャンとして、アレサ・フランクリンなどのバックバンドを務めました。
1971年3月には、サンフランシスコのクラブ「フィルモア・ウェスト」で、アレサ・フランクリンの前座およびバックバンドとして出演しました。このライブが評判となり、その演奏がレコード化されました。村上春樹さんは、このアルバムを「本当に素晴らしい」と評価しています。
しかし、それからわずか5ヶ月後、カーティス氏は自宅近くで麻薬患者と口論になり、ナイフで刺されて亡くなってしまいました。その時、彼はまだ37歳という若さでした。この悲劇的な出来事に、村上さんは「惜しいというか、気の毒ですね」との思いを述べています。
では、その「フィルモア・ウェスト」のライブ盤から「Memphis Soul Stew」をお聴きください。この曲は以前、スガシカオさんがゲスト出演したときにも短いスタジオバージョンが流れました。その際、二人は「キング・カーティス、最高だね」と盛り上がったそうです。今回は長いフルバージョンでお届けします。
「Memphis Soul Stew」は、音楽の仕立てを料理のレシピに例えて解説しており、そのスタイルがとにかくかっこいいのです。オルガンはビリー・プレストン、ギターはコーネル・デュプリー、エレクトリック・ピアノはトルーマン・トマス、ベースはジェリー・ジェモット、ドラムスはバーナード・パーディ、コンガがパンチョ・モラレス、そしてメンフィス・ホーンズという豪華なメンバーが集結しています。
収録中の村上春樹氏のつぶやき
曲が流れる中、村上春樹さんはこうつぶやきました。「ここでベースが入ってきて、ここでドラムが入って、コーネル・デュプリーのギターが入る、かっこいいでしょ。そしてオルガンのビリー・プレストン。さらにメンフィス・ホーンズ、コンガが入る。そして本人のキング・カーティス……。」
このコメントからも、村上さんがどれほどこの楽曲に感動しているかが伝わってきます。
番組概要
番組名:村上RADIO~ソウル・インストルメンタル・グループ~
放送日時:2024年8月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
今回の「村上RADIO」では、1960年代のソウル・インストルメンタル・グループにスポットを当てた特集が行われました。特にキング・カーティスの2曲「Jump Back」と「Memphis Soul Stew」は、村上春樹さんの深い感慨とともに紹介され、その魅力を余すところなく伝えてくれました。
これからも「村上RADIO」では、さまざまな音楽ジャンルが紹介されることでしょう。村上春樹さんの独特の視点とともに、新たな音楽の世界をぜひ楽しんでください。