村上春樹人生に絶望し、立ち上がった浪人生に届けた言葉とは？「人生には必ず『どつぼ』のようなきつい時期があります。僕にもちゃんとありました」のポイントをまとめてみた

2024年7月30日

人生に絶望した浪人生に贈る村上春樹の言葉

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーを務めるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」（毎月最終日曜 19:00～19:55）。7月28日（日）の放送は「村上RADIO～マイ・フェイバリットソングズ＆リスナーメッセージに答えます３～」をオンエアしました。この番組では普段はリクエストやお便りを紹介していませんが、毎回放送後に村上DJ宛にリスナーからたくさんのメッセージが届きます。今回はその中からいくつかのメッセージを村上DJが選び、音楽とともに紹介しました。この記事では、後半3曲とクロージング曲、そして「今日の言葉」について語った部分を紹介します。

Boz Scaggs「Love On A Two Way Street」

ボズ・スキャッグズの名曲「Love On A Two Way Street」が流れたところで、村上さんはリスナーからのメッセージを読み上げました。

リスナー「迷い猫」さんからのメッセージ

迷い猫さん（18歳の浪人生、東京都）は、恋人に去られ、友人に生き方を否定され、さらに大学にも落ちてしまったという辛い経験をしていました。これまでに感じたことのない喪失感に深く傷つき、絶望しか感じられなかったという彼は、村上春樹さんの作品に救いを求めたそうです。そして中学生の時に惹かれた村上春樹の文体が、18歳になった今、初めて自分の中に実感を持って入ってきたと語っています。

村上さんはこのメッセージに対して、「人生には必ず『どつぼ』のようなきつい時期があります。僕にもちゃんとありました。」と自身の経験を交えつつ答えました。「僕の場合、20歳の頃に何をしてもうまくいかず、長い間ひとりぼっちでした。」それでも「そういう時期は人生にとって必要なものだ」と励まし、「その経験を滋養にして人は成長します。」と強調しました。

JJ Cale & Eric Clapton「Sporting Life Blues」

続いての曲はJ.J.ケールとエリック・クラプトンが歌う「スポーティング・ライフ・ブルーズ」です。この曲を紹介する前に、中国からのリスナー「品川狸」さん（31歳女性）からのお便りが紹介されました。

リスナー「品川狸」さんからのメッセージ

品川狸さんは、村上春樹さんの小説を読んで日本文学にハマり、日本に留学する決意をしたそうです。村上RADIOのイベント「村上JAM」にも参加し、普段は聴かない種類の音楽に触れる貴重な体験をしました。現在、自分でも何かを書きたいと思っているが、登場人物が全て自分になってしまうと悩んでいる品川狸さんに、村上さんはどうやって面白いキャラクターを作っているかという問いかけをしました。

村上さんは「僕の小説の登場人物は、向こうから勝手に出てくることが多いんです。」と答え、自分が登場人物を観察して文章にするだけだと述べました。また、「まわりの人をよく観察すること」と「たくさん本を読むこと」が大事であり、焦らずにじっくりやることが重要だとアドバイスしました。

Summer Has Begun!〜夏は来ぬ（feat. Carole Nobuka）

次に流れたのは、Red Kimono Projectというグループが英訳した歌詞で歌う「Summer Has Begun!〜夏は来ぬ」です。この歌について、村上さんは「ホトトギスが早くから起きて啼いている」という意味だと思っていたが、実は「早くもやって来て啼いている」という意味だと語りました。長く生きていると、こうした発見があるものです。