リアル・トラウム:クラシカル・クロスオーヴァーの新たな風
写真クレジット:SPICE
はじめに
2023年6月3日に浜離宮朝日ホールで初のコンサートを開催してから約1年。クラシカル・クロスオーヴァーの男性ヴォーカル・ユニット「リアル・トラウム」が、東京と大阪で成功裏にコンサートツアーを終了しました。グループ名が示す通り、「夢を実現する」ことを目指し、これまでの活動を重ねてきた彼らの最新公演をレポートし、2025年2月16日に予定されているBunkamuraオーチャードホールでの公演についても速報します。
公演の幕開け
暗闇の中、ピアニストの藤川有樹が登場し、ヴェルディのオペラ「椿姫」の「乾杯の歌」のイントロを弾き始めます。この華やかなスタートに続き、メンバー4人が登場し、有名な旋律を歌い上げました。一気に観客を惹き付ける彼らのパフォーマンスは、結成以来積み上げてきた経験が反映されたものでした。
カンツォーネとオペラの魅力
リアル・トラウムは結成以来、YouTubeで大人気の「オ・ソレ・ミオ」などのカンツォーネを数多く歌ってきました。この日もリラックスした雰囲気で観客を魅了しました。さらに、没後100年となるプッチーニのオペラ『トスカ』のメドレーでは、その緊張感溢れる悲劇のドラマを見事に表現しました。
ソロとメドレーの見せ場
メンバー各自のソロを織り交ぜながら、イタリアのカンツォーネの名曲をメドレー形式で披露。その中で特に印象的だったのは「フニクリ・フニクラ」と「ラ・ダンツァ(踊り)」です。また、前半最後には、レオンカヴァルロの名アリア「衣装をつけろ」(オペラ『道化師』より)で、鳥尾匠海が情感豊かなMCを交えて独特の味わいを見せました。
後半のドラマティックな展開
後半の公演は、暗闇の中でピアニストの藤川とテノールの杉浦奎介がスタート。シューベルトの「魔王」を4つの役に分けて演じた斬新な演出が取り入れられました。特に、杉浦が語り部として本を大仰にパタンと閉じるシーンは、ドラマティックな展開を見事に伝えました。
さらに、アンドレア・ボッチェリとセリーヌ・ディオンのデュエット曲「ザ・プレイヤー」を4人で完璧に歌い上げ、その美しいハーモニーに観客はため息を漏らしました。
日本語の歌も
リアル・トラウムは、日本語の歌も積極的に取り入れています。この日は、井上陽水の「少年時代」を披露し、観客との一体感を感じさせました。また、リーダーの高島健一郎はドイツツアーのため一時ウィーンに帰ることを公表しながら、心境に合わせた「故郷」を全員で歌い上げました。
エンディングと重大発表
初公演で歌ったレハールの「君は我が心のすべて」で締めくくり、アンコールには「千の風になって」が演奏されました。そして、高島からの重大発表により、来年2月16日にBunkamuraオーチャードホールでの公演が決定したことが告げられました。観客は歓喜の声と拍手で応え、感動の波がホール全体を包み込みました。
最後に
筆者は一年前の結成コンサートも見る機会がありましたが、今では彼らの人気とパフォーマンスの自信が大いに感じられます。リアル・トラウムは、間違いなく世界のクラシカル・クロスオーヴァー・ヴォーカル・ユニットのトップグループのひとつであり、彼らの未来への期待が高まるばかりです。2025年2月16日には、満席のオーチャードホールで彼らの歌声を楽しむことになるでしょう!
取材・文=神山薫